ピンチノーズとは?
ピンチノーズとは、英語の摘まむ=Pinchが語源の呼称で、鼻先を洗濯バサミなどで摘んだような鼻尖の形状を指します。
ピンチノーズの多くは医原的原因(美容整形や形成外科におけるミスマッチ手術や術後拘縮などが原因)です。
ピノキオノーズとは?
ピノキオノーズとは童話の「ピノキオ」が語源の呼称で、鼻先が異様に尖った形状を指します。
ピノキオノーズの多くは、「ピンチノーズ」と同様にやはり医原的原因です。
何れもミスマッチサイズのシリコンプロテーゼ挿入や鼻尖結紮、鼻尖形成術や鼻中隔形成術後の合併症として生じることが多く、その状態を治そうとして、オープン法や鼻尖への耳介・肋軟骨移植術をされてしまい、もっと複雑な問題や醜形になることも少なくありません。
症例① 38歳 女性
他院手術歴 32歳時(2002年7月)全国系列美容整形医院にて、L型シリコンプロテーゼ挿入 2ヶ月後にシリコンプロテーゼを入れ替えた(L型→L型) |
希望デザイン 他院挿入のプロテーゼが突っ張ってきて鼻尖部皮膚が薄くなり、穿孔・露出しかかっているのを治したい。 鼻先にもう少し丸みを戻して下に下げたい。 |
方法 シリコンプロテーゼ入替(I 型)& 鼻尖軟骨一部トリミング切除 & 鼻尖陥没部に裏パッチワーク挿入術 |
Dr.コメント 2008年11月に完全CLOSE法にて手術をした症例です。2度に跨るL型シリコンプロテーゼの手術により、鼻尖の組織が穿孔の1歩手前まで菲薄化していました。典型的なピンチノーズ・ピノキオノーズです。 プロテーゼを抜去しただけでは必ずしも「元の鼻」に戻るとは限らず、人工物周囲に巻付いた繊維性の被膜カプセルとデッドスペースおよび細胞レベルでの壊死による組織欠損などが問題になることもしばしばです。 2008年当時まだ人工真皮がメジャーではなかったため、L型シリコン抜去&I型への置換と、欠損部を補強するため鼻尖軟骨の一部をトリミングカットして、鼻尖の裏側からパッチワークの様に嵌める術式を採択しました。 御希望通り丸みを復元させながらノーズダウンし、穿孔や壊死拡大に至らず予防できました。 |
症例② 20歳 女性
他院手術歴 2007年11月:L型プロテーゼ挿入(もともと鼻尖部を高くしたかった) |
希望デザイン 術直後の腫れていたときから鼻尖部が尖っていて発赤もあった。外からも先端が硬く触れていた。 既存のある型のプロテーゼをそのまま入れられた様に思う。美容的にも今の状態は鼻が高すぎる。 |
方法 シリコンプロテーゼ入替 & 鼻尖軟骨一部トリミング切除 & 鼻尖陥没部に裏パッチワーク挿入術 |
Dr.コメント 2008年5月に完全CLOSE法にて手術をした症例です。未加工のL型シリコンプロテーゼを強引に挿入されたからか、この症例も鼻尖の組織が穿孔の1歩手前まで菲薄化していました。 ピンチノーズ・ピノキオノーズに対する当時の業界での修正法としては、シリコン抜去orダウンサイズして入替or自己組織への置換の3択でした。菲薄化した鼻尖組織に対する根治療法が無く、上記の3択のみでは却って穿孔させてしまうリスクが増大する一方でした。 欠損部を補強させるため鼻尖軟骨の一部をトリミングカットして鼻尖の裏側からパッチワークの様に嵌める当院オリジナルの術式は、実はこの症例が初でした。現在は、鼻尖軟骨を用いなくとも同様の方式で人工真皮(Sure Derm)で補完することも可能になっています。 |
症例③ 63歳 女性
他院手術歴 50歳時(1999年頃)形成外科医院にて隆鼻目的で、L型シリコンプロテーゼを挿入された |
希望デザイン 上向きで細い鼻をキープしたいが、硬く突っ張る違和感と不自然な見た目を治したい。 |
方法 シリコンプロテーゼ一部切除(予定)→ 全抜去&鼻尖軟骨切除&再移植術&シュアダーム挿入術 |
Dr.コメント 2012年4月に完全CLOSE法にて手術をした症例です。当初、挿入されていたシリコンを残したい旨を御希望されていましたが、10年以上の年季が入っているシリコンの周囲には、石灰化沈着と高度な被膜が併発していて術中所見にもある様に、抜去後は鼻尖と鼻背が大幅に陥没しました。 内部で想定以上に被膜の拘縮や組織欠損が進行していたことを示唆しています。このままでは、術中横方向の写真にある様に、ミイラの様な鼻になってしまいます。 鼻尖軟骨をトリミングカットして鼻尖の「柱」として補強しつつ、人工真皮によって崩れて縮んだ鼻を、ご希望に可能な限り忠実に復元しました。 シリコンやゴアテックス、オステオポールやフレックスノーズ等の異物除去では、万一に備えた復元プランが重要になります。 |