症例① 62歳 女性
他院手術歴 30歳時(1990年) 鼻尖部に耳介軟骨移植 56歳時(2016年) 交通外傷で左頬骨陥没骨折し、公立病院形成外科にて左下眼瞼を4か所切開+溶解性プレートで固定 59歳時(2019年) 両側眉下切開 |
希望デザイン 左側の外傷手術後に相対的に目立ってきた右側の下瞼の膨らみとタルミを切らずに改善させたい。 |
方法 右側のみ下眼瞼脱脂+脱脂をインディアンライン(ゴルゴ線周囲の陥凹部)に注入 |
Dr.コメント 交通外傷の修復手術後によって生じた下眼瞼周囲の著明な左右差に対して、「メスを用いずに」とのご要望を同時に満たす最善と思われる術式は、術前の徹底したシミュレーションと予後についての打合せが(通常の経結膜脱脂術よりも)入念に必要でした。いわば「こちらを立てればあちらが立たず」の様な、別の左右差を生じさせてしまう個別で状態特有の問題があるためです。例えば、過剰に膨らんだ右下眼瞼の余剰皮膚を切除せずに、左側と比較して限りなく近づけなければならず、開眼時の瞳の大きさにも留意しなければならなかった症例です。過去、多くの方々の施術を担当してきた中で、「正解」となる術式の組合せ選択は、脱脂の程度や注入脂肪の配置と生着率の精緻な予測まで経験から得た解答でした。 |
症例② 18歳 女性
他院手術歴 17歳時(2021年5月) 左頬下部に粉瘤が発症し、2022年1月某公立病院の形成外科にてエコー検査後に縦切開・剥離され、粉瘤を摘出された。その後瘢痕拘縮による陥凹が目立ち始めたため担当医により同年5月、ステロイド(ケナコルト)を注射されるも、陥凹が治るどころか寧ろ悪化した。他の形成外科にも相談したところ2~3箇所切開して糸ノコギリの原理で拘縮を切断するしかないと云われて、更に傷跡が増えて目立つことが怖くなり当院受診に至った。 |
希望デザイン これ以上切開せずに、硬くなって凹んでいる不自然な穴を治したい。特に笑顔時に凹みの程度が周辺に及び、頬の感覚も鈍いので、できるだけ元の自然な状態に戻したい。 |
方法 左頬下部:特殊治療セット(1回)&線維化組織(残存シコリ)溶解・再発予防処置(計3回) |
Dr.コメント 前医形成外科で施された「瘢痕陥凹部へのステロイド注射の単独療法」は、この症例に限らず不適切な「改悪ミスマッチ治療」にしかなりません。総論でも述べましたがステロイド注射の適応は、肥厚性瘢痕やケロイド瘢痕を造り出している異常活性した線維芽細胞に対し数週間だけ異常線維の生産を抑制させる目的にのみ有効です。同時に留意すべきは「異常でない」周辺組織の代謝や活性まで抑制されて、陥没範囲を拡大悪化させる副作用があることです。この症例はその典型ですが、当院で用いる特殊な溶解法では異常線維組織のみ分解する酵素を用いるので陥凹を悪化させず寧ろ拘縮を解して柔らかく膨らむ方向に効果を引き出すことが可能です。但し、希釈濃度や注入深達度と注入方法に秘術が伴います。 |
症例③ 57歳 女性
他院手術歴 25歳時(1986年頃) 東京の個人開業医院にて額にシリコンプロテーゼを挿入された。 34歳時(2000年4月) 顎下吸引、顎にヒアルロン酸注入(1回) 顎先にもプロテーゼ挿入していた時期がある。 |
希望デザイン 若いころに額に入れたシリコンのせいで次第に「おでこ」が不自然な凸凹になり、25歳からずっと眉を挙げる時の左右差が目立っていたのを、この機会に治したい。 |
方法 額プロテーゼ抜去&VASER超音波吸引(顎+下顎) 吸引量:血性排液を含む総量350ml |
Dr.コメント この症例は、25歳の時に受けた前額へのシリコンプロテーゼ挿入術の際に、右前頭部の顔面神経分枝が損傷を受けたためか、右側の眉挙上が随意にできなかった方です。 (1年未満なら回復の余地がありますが) 20年以上も経過しているので、切断されていたり動脈途絶による神経細胞の壊死があれば不可逆的なダメージですので、完全な回復には既に手遅れの状態です。せめて、不自然な前額の凸凹の解消とアンチエイジング目的の脂肪吸引によって、左右差改善と傷跡も判らないくらいに(前医の手術瘢痕を皮膚割線上で寸分違わず)切開し、可及的除去を試みました。摘出されたシリコンはかなり劣化していて至る所石灰化を伴い、高度な線維化によって締め付けられ続け、既に前額内で分断されていました。 |