シリコン・生食バッグ・Filler注入がダメな理由と背景
どんなに精巧で最新のシリコンプロテーゼでも生理食塩水バッグでも、異物は人体に挿入後数ヶ月から数年を経て遅延型異物応答反応と呼ばれる線維化・肉芽化・石灰化が生じてきます。するとやがてバストの変形・硬化・内部破損・慢性の発赤・引き攣れや感覚障害・表皮穿破や露出等の後遺障害となって、更に時間が経つ程に難治性へと移行してゆくこともしばしば見受けられます。ヒアルロン酸やアクアフィリング等のFiller注入は手技が比較的容易であり、低時間コストで経験の浅い医師でもできますが、その修正はかなり困難です。プチ豊胸を受ける意識と金銭ハードルが低いのですが、一時的に満足する結果が得られたとしても今度は麻薬中毒の様にやがて注入し続けなければ却って不自然に凹む胸や張りが無い胸となり、生じうる合併症の程度も頻度も全く釣り合わないくらいに深刻になるのです。
症例① 36歳 女性
他院手術歴 33歳~35歳時:年に一回程度計3回、下垂気味のバストを改善させる目的にヒアルロン酸を注入 |
希望デザイン 左右にできた胸のしこりと左右差を治しつつ、バストの張りを戻したい。カップ数を保持しながら下垂しているバストも改善したい。 |
方法 バスト他院修正 1回目:穿刺&特殊治療 2回目:穿刺&特殊治療 3回目:穿刺&特殊治療+再生医療による豊胸術バストフルプレミアムフルセット注入 |
DR.コメント この症例はヒアルロン酸を注入される度に下垂が少し改善されて張りが一時的に得られていても、1年以内に萎んできて結局カップ数が元よりも上がったことがないと仰っていました。しかし問題はそこからでした。同時多発性のシコリでバストが次第に変形してきてかなり不自然になり、なんと注入を担当した筈のバスト専門の美容クリニック(乳癌検査もできる有名医院)に治療を依頼するも、ヒアルロニダーゼを1度だけ注射され、しこりが多発的に殆ど残存している中、すぐに別の高額注入系豊胸を勧められただけでした。結局その医院ではしこりを治せなかったのです。 |
豊胸手術分野でのNG手術とは?
※ページ最下段 美容整形Dr.選びのNG例とは?に加えて
- 一生涯傷跡が目立つ乳房下縁切開や乳輪周囲切開を薦められる
- シリコンプロテーゼや生理食塩水バッグ等の異物を第一に勧められる
- シリコンなどの異物挿入と脂肪などの自己組織注入を同時に行う
- ヒアルロン酸やアクアフィリング等のフィラー注入を勧められる
- 異物抜去層と同じ層に脂肪や幹細胞などの自己組織を注入される 等、どれか一つでも当てはまれば申し込まずに思い留まって下さい!
症例② 49歳 女性
他院手術歴 46歳時:バストにヒアルロン酸注入 |
希望デザイン ヒアルロン酸豊胸を直後から硬くなり、ヒアルロニダーゼ注入(計7~8回)するもしこり改善せず。数回に分けてでも注入物の回収またはしこりの治療をご希望。 |
方法 バスト他院修正 1回目:穿刺&特殊治療 2回目:穿刺&特殊治療 |
DR.コメント この症例は、ヒアルロニダーゼを何度注入してもしこりが治りきらず当院を受診されました。豊胸は希望されず、難治性となったMultiple tumorをヒアルロニダーゼ以外の治療法で多発的に局在する各々のしこりを、部位別原因別に鑑別しながら合計2回の治療で軽快した方です。ヒアルロン酸と雖も注入異物であるため、シリコンバッグ周囲に生じる様な被膜カプセルが(バッグよりも)小さく無数に発生し得てしまうことと、乳腺内に誤注入されていた場合の難治性、そして万一動脈内への誤注入による組織壊死、或いは(御本人に無断で)不溶性異物が混入されていた場合の肉芽形成などが、Filler注入にはいつも付きまとう問題となり、鑑別と適切な治療法の選択を要します。 |
ヒアルロン酸等の豊胸フィラー注入で失敗されるとこうなります!
ヒアルロン酸やアクアフィリング等のFiller注入は、ヒアルロニダーゼ等の溶解系注射でも溶解できないかFillerの材質によっては全く無反応のこともあり、元の健全なバストに戻すのがかなり困難になることもあります。それが難治性のシコリになると、大学病院でさえ乳房内腫瘍疑いという病名をつけ、乳房を大きく切開して内容物掻把(中を開けて掻き出すこと)でなければ治せないと(即ち他に方法が無いと)言われることも多く、しかしそれでも決して100%の元の状態には戻せません。傷跡が目立ち、乳房が凸凹になり、下垂が生じ、左右差も出てくる上に、授乳機能障害や慢性の乳腺炎になることも覚悟しなければならなくなります。当院では、Filler等の注入系異物による豊胸後のトラブルに対して、第一に(メスを用いない)穿刺排出を試み、可及的に異物を取り除く技術があり、その後残存するシコリや凸凹等に対しては特殊な治療法で(仮に数回かかっても)根治を目指せる新治療法がございます。穿刺排出のみでは困難な場合には傷跡が目立たない位置からオープンカプスレクトミーを行います。
症例③ 51歳 女性
他院手術歴 25歳時:海外で当時普及していた液体シリコンを両乳房内に大量に注入し、次第に多発性の腫瘤を触知するも様々な医院で摘出を拒まれる。 |
希望デザイン 初診時両胸に高度肥厚性被膜と石灰化著明、多層性の腫瘤を触知し、局所熱感と圧痛が激痛となるため緊急摘出手術となる。 |
方法 バスト他院修正 1回目:注入物除去&オープンカプスレクトミー 2回目:再生医療による豊胸術バストフルプレミアムフルセット注入 |
DR.コメント この症例は、アナムネ聴取(問診)の時点で穿刺でも溶解系特殊治療でも無効であることがすぐに診断されたためと、乳房内が無数の針で刺されている様な激痛が、日を追うごとに悪化していてご本人様の御希望もあり緊急オープンカプスレクトミーと内容物可及的全掻把を行った方です。まるで25年前に留置された時限爆弾であるかの様な劇症発症でしたが、夏ミカンほどの厚みのあるゴワゴワした蜂窩状の被膜に、水飴の様なOil状の液体シリコンが大小至る所で貯留し、それらを丁寧に吸引と拭取りを繰り返しつつ被膜と共に鶏卵の殻を細かく砕いた様な石灰化組織が両乳房内から無数に摘出できたので、やはり臨床症状と一致しておりました。 |