鼻尖埋没(鼻尖結紮)法や溶解注射がダメな理由と背景
所謂「ダンゴ鼻」と呼ばれる、丸みのある鼻尖部を細くまたは高くする目的で各美容医院では様々な術式が見受けられておりますが、当院では鼻中隔切離を伴うOPEN法と共に、鼻尖を結紮(糸で縛るだけの方法)する鼻尖埋没法、埋没式鼻尖縮小術をNG指定しております。鼻尖軟骨のカタチや大きさは先天的に個人差や左右差もありますが、鼻尖部の外傷や手術でもすぐに割れたり粉砕し、或いは変形する程の(爪くらいの)厚みしかありません。
糸で結紮する手術は外側からと鼻腔内からのアプローチ法がありますが、いずれにしてもメスで切開が不要なことが多いため、術者も時間と経済効率から安易に選択しがちです。しかし、結紮糸が鼻腔内や鼻の表面に露出し感染を生じせしめる事案や、(これが最も多いのですが)鼻尖軟骨が結紮により割れ、その鋭利な割れ目が皮膚穿孔を生じたり、鼻尖部が(術後数ヶ月~数年経過して)硬く変形してきたりする後発的合併症を発症する例も後を断ちません。しかも、その様な合併症が生じなくても、90%以上の被験者の鼻尖部は、「結紮糸が緩む・(軟骨が割れて)喰込む」等の理由で後戻りしてしまうのです。
つまり、鼻尖結紮法は百害あって一利無しと当院では考えます。一方で鼻尖部の脂肪を溶解する目的でメソセラピー注射をされる医院もあると(お客様から)伺ったことがありますが、鼻尖部には解剖学上それ程の脂肪組織はなく、多少溶解できたとしてもその死腔が癒着してこその細さになる筈なのに、多くは圧迫固定がなされていません。逆に溶解注射後はかなり腫れますので、過剰圧迫してしまうと鼻尖壊死を生じることがあります。
症例① 24歳 女性
他院手術歴:鼻の整形歴なし |
希望デザイン 自分では元々胡坐鼻と思っていて、正面から鼻の穴が目立たない様にしながら鼻翼を縮小しつつ、鼻先も細く高くしたい。 |
方法 完全Close法 両側鼻尖軟骨切除&再移植術 TYPEⅡ |
Dr.コメント ダンゴ鼻(鼻尖部)と小鼻(鼻翼)とを両方同時に細くできるのが鼻尖軟骨切除術です。仮に小鼻縮小手術のみを御希望されても、術前シミュレーションで却ってダンゴ鼻が大きく見える結果になる場合や、鼻孔が狭くなり過ぎて呼吸量の減量が認められる場合には、小鼻縮小術が第一選択ではありません。鼻翼根部を軽くつまんでみて鼻孔だけ狭くなるか、鼻孔の形が外向きに尖って見える場合には、寧ろ鼻尖軟骨切除術の方が鼻孔の形を良くしながら呼吸流量に影響を与えません。この症例は左鼻尖軟骨が既に割れていましたが、鼻尖部先端を更に尖らせたいとのことで使用可能な部分を尖らせない様にトリミングして縦方向に2枚重ねの再移植術TYPEⅡの適応となりました。 |
鼻尖軟骨切除&再移植術が他院MENUにない理由と背景
鼻尖軟骨とは、鼻尖部の形状を保つ1対の(概ねその人の薬指の爪大の大きさ)軟骨で、通常のレントゲンでは写らず所謂「ダンゴ鼻」の大半の原因になっている軟部組織です。民族によって、また日本人の中でも遺伝的に生得的な大きさ・形・厚みに個人差が大きく、生来より片方の形成不全(左右差)がある場合や、外傷や手術歴等で既に割れていることもあります。その鼻尖軟骨を除去する際に多くのクリニックではOPEN法を採用していますが、それはCLOSE法だと技術的に難易度が高くなるからであり、鼻腔内術野で上手く剥離・脱展しなければ皮膚や粘膜側に一部残留したり、手術操作で切断してしまうこともあり得る程、かなりデリケートな手技を要するのです。OPEN法がCLOSE法と比較してかなり安易であり、時間効率もよく形成外科でも伝統的に正当化している背景があります。
CLOSE法による鼻尖軟骨切除&再移植術が高難易度である理由
鼻尖軟骨の剥離途中から個人差と左右差と残留や破損がないか慎重に見極めつつ、鼻尖軟骨内側脚や鼻尖中央部の過剰切除をしない様に(過剰切除すれば鼻中隔が崩落することもあるため)必要かつ充分で事前デザイン通りの全容摘出をしかも余計な損傷なく遂行しなければなりません。加えて、摘出後の死腔(DEAD SPACE)が再移植に適した余地があるのかどうかも同時に(ほぼブラインド腔内ですが、触診や術中ライティング等で)視野に入れつつ、摘出標本をダイヤモンドのカッティング技巧の様に再移植部に適した形状にトリミングします。その際にカット面が鋭利にならず(穿孔予防のため)少しだけ肉芽片を残して移植後のFeedingを受け易い状態になる様充分に留意します。毎回出血が出る度に狭い術野が更に視界不良となりますが、たとえ出血が容易に止血できなくても電気メスによる凝固止血を安易に用いれば再移植軟骨へのFeedingに影響があるため、極力用いません。当院では、ご本人様の元々の鼻の形状とお伺いした御希望に対して忠実にオーダーメイド手術をするために、再移植するデザインを便宜的にTYPEⅠ~TYPEⅤに分類しています。この分類は当院独自のもので、過去の様々な方のご要望に応じてゆく内に適応や用途が広がって参りました。
実は、この再移植が最も難関で異物である糸も使用せず、TYPEⅠやⅡでは術後の傾斜や位置異常、TYPEⅢでは鼻中隔の後戻り予防、TYPEⅣでは鼻背(鼻スジ)の㎜単位の凹凸に完全にFitさせるカッティング、TYPEⅤでは陥凹部へ裏側からアプローチした菲薄層への必要充分のパッチワーク技術が必要になります。再移植後の鼻尖軟骨の生着率は大変素晴らしく、過去14年間の症例では現時点で一度も(耳介軟骨移植後の様な)鼻尖の硬化や変形が見られません。
鼻尖形成を完全CLOSE法でしなければならないのは何故か?
これら一連の手術操作を、OPEN法で行うのと、完全にCLOSE法で行うのとでは雲泥の差があるのです。敢えてボトルの中の船の模型で喩えるなら、ビンの底から模型丸ごと入れた後にガラス接合するのと、ビンの口からピンセットで模型を作成するくらいの差です。
OPEN法による傷跡はその方を一生涯苦しめます。女性ならヒゲで隠れることもなく、メイクでは大方隠しきれず、中には瘢痕の引攣れが強すぎて、笑顔になれなくなった方もいらっしゃいます。諸悪の根源はその手術を行った担当医の事実認識不足と修行不足と怠慢です。或いは営利主義か大学講義の形成外科が一番だと妄信しているかです。
症例② 22歳 女性
他院手術歴:なし |
希望デザイン 傷跡が目立つOPEN法ではなく、プチ整形でもシリコンでも耳介軟骨移植でもない方法で鼻の孔を上品に細くしてダンゴ鼻を改善したい。鼻翼に自然なクビレが欲しい。 |
方法 完全Close法 両側鼻尖軟骨切除&再移植術 TYPEⅢ |
Dr.コメント この方の鼻尖軟骨は最初から片方に大小2セットずつ重なった形状でしたので、右側の鼻尖軟骨とよく比較してみると、左側が割れているのではなく大小セットが分離しただけであることが判ります。総じて右鼻尖軟骨の総量がやや大きく、術前正面や下からアングル写真からも鼻腔の見え方に左右差があり、鼻尖内組織が右から左に向けてやや圧排している様に見受けられます。再移植術TYPEⅢの技法により、左右の鼻腔の大きさと形を整えつつ控えめのUP NOSEが実現します。鼻尖軟骨外側縁を上手く切除することにより、鼻翼上部に(矢印鼻やニンニク鼻にならない程度の)クビレ線を形成することもできます。鼻尖軟骨を切除しても再移植しても通常のレントゲンには写りません。 |
鼻整形・形成修正でのNG手術とは?
※ページ最下段 美容整形Dr.選びのNG例とは?に加えて
- OPEN法や外側切開法を薦められる or 希望していない手術を薦められる
- シリコンやゴアテックス、リフト糸の挿入・異種動物軟骨移植を勧められる
- 耳介や肋軟骨(粉砕しても凸凹・拘縮・石灰化リスク有)移植を勧められる
- 貴方の鼻の皮膚伸展度に合わない程の挿入物を希望または挿入される
- 硬くなった壊死軟骨や癒着、肉芽等をそのままにした状態で修正される
- 抜去と同時にヒアルロン酸や脂肪注入(漏出変形リスク有)を薦められる 等、どれか一つでも当てはまれば申し込まずに思い留まって下さい!
症例③ 25歳 女性
他院手術歴 20歳~25歳:年に1回程度、ヒアルロン酸またはRADIESSEによるプチ整形隆鼻術 |
希望デザイン ずっとプチ整形で鼻を高くしていたが、永久効果でない上にいつも鼻先端が思い通りに細く高くならなかった。それにはVOLUMEの足し算だけでなく鼻先のVOLUMEの引き算が必要で、余った皮膚で細く高くできるのだと説明を受けたので腑に落ちた。長年の思いに決着をつけたい。 |
方法 完全Close法 両側鼻尖軟骨切除&再移植術 TYPEⅠ |
Dr.コメント この症例で採取できた鼻尖軟骨は破損が無くて形状と厚みが再移植用に申し分なく、鼻尖部の屋台骨を支えるのに充分な支持力が得られそうでした。加えて、その分鼻尖部の皮膚やDEAD SPACEに伸展の余地も充分に得られたため、ご本人様の御希望通りの再移植術 TYPEⅠの適応となりました。鼻孔の変容も鼻尖部の尖りも(鼻尖部には鼻尖軟骨を含む軟部組織が密集していて簡単には形が変わらない)この方が従来受けていたプチ整形ではどんな名医でも実現できないのは尤もですが、再移植術 TYPEⅠの場合は後に型崩れが生じないかが問題です。術後のギプス固定をしっかりとして頂いたおかげで、4ヶ月後でも安定していましたので既に組織が移植先でFeedingを受けて同化しているものと思われます。 |
鼻尖形成で失敗されるとこうなります!
鼻中隔を切断するOPEN法、または鼻翼外側に傷をつける手術、シリコンやゴアテックス・豚軟骨の移植、自己耳介軟骨や肋軟骨移植術、鼻尖を糸で結紮する手術を勧められた場合、その担当医がどんなに名医で有名でも、或いは過去の症例実績がどれほど素晴らしく自然で美しく見えたとしても、決してその様な手術は受けないで下さい。有名医師や鼻専門の医師の術後でさえ当院で鼻形成後の修正をした方の中には、当院の術前初見において、元よりも著しく醜形となっていた方が数多くいらっしゃいます。