鼻尖埋没(鼻尖結紮)法や溶解注射がダメな理由と背景
所謂「ダンゴ鼻」と呼ばれる、丸みのある鼻尖部を細くまたは高くする目的で各美容医院では様々な術式が見受けられておりますが、当院では鼻中隔切離を伴うOPEN法と共に、鼻尖を結紮(糸で縛るだけの方法)する鼻尖埋没法、埋没式鼻尖縮小術をNG指定しております。鼻尖軟骨のカタチや大きさは先天的に個人差や左右差もありますが、鼻尖部の外傷や手術でもすぐに割れたり粉砕し、或いは変形する程の(爪くらいの)厚みしかありません。
糸で結紮する手術は外側からと鼻腔内からのアプローチ法がありますが、いずれにしてもメスで切開が不要なことが多いため、術者も時間と経済効率から安易に選択しがちです。しかし、結紮糸が鼻腔内や鼻の表面に露出し感染を生じせしめる事案や、(これが最も多いのですが)鼻尖軟骨が結紮により割れ、その鋭利な割れ目が皮膚穿孔を生じたり、鼻尖部が(術後数ヶ月~数年経過して)硬く変形してきたりする後発的合併症を発症する例も後を断ちません。しかも、その様な合併症が生じなくても、90%以上の被験者の鼻尖部は、「結紮糸が緩む・(軟骨が割れて)喰込む」等の理由で後戻りしてしまうのです。
つまり、鼻尖結紮法は百害あって一利無しと当院では考えます。一方で鼻尖部の脂肪を溶解する目的でメソセラピー注射をされる医院もあると(お客様から)伺ったことがありますが、鼻尖部には解剖学上それ程の脂肪組織はなく、多少溶解できたとしてもその死腔が癒着してこその細さになる筈なのに、多くは圧迫固定がなされていません。逆に溶解注射後はかなり腫れますので、過剰圧迫してしまうと鼻尖壊死を生じることがあります。
症例① 40歳 女性
他院手術歴 32歳時:鼻尖形成(恐らく鼻尖結紮)術を受けたが右鼻翼が左に比べて挙上し、鼻尖部に変な表情シワ(引攣れ線)が出現した。 35歳時:残存軟骨と肉芽を除去して右鼻翼上部に再移植したが全く治らず後戻りした 36歳時:左耳介軟骨を再度右鼻翼上部に再移植したが少し後戻りしたので更に薄いⅠ型プロテーゼを鼻背部に挿入し、ヒアルロン酸注入を繰り返したが、それでも症状が治らなかった。 |
希望デザイン 鼻先端の不自然な表情シワ(引き攣れ線)を無くして、左側の瘤状の硬い膨らみを柔らかくし、鼻の左右差や異物感を治してもらいたい。歪んでみえる鼻スジをスッキリとさせてついでに少し高くしたい。 |
方法 鼻整形修正(鼻尖埋没術の修正) 右鼻尖軟骨と壊死耳介軟骨除去&左残存鼻尖軟骨(肉芽・繊維)除去&右鼻尖への一部再移植 |
Dr.コメント 鼻尖部が変形硬化していた原因は、右鼻翼上部に移植されていた耳介軟骨が一部壊死を起こしたことだと思われます。壊死→被膜拘縮&肥厚化→右鼻尖軟骨を巻き込み変形→右鼻尖の癒着と引き攣れ→右鼻翼上部と左鼻尖軟骨への圧排→右鼻尖部の緊満性腫脹→上口唇を下に下げた時の凸凹と不自然な鼻尖表情シワ(DESIGN緑色破斜線部)の出現というのが、発症ヒストリーです。このまま放置していれば、左鼻尖部が穿孔する可能性が高いと思われ、鼻尖結紮や耳介軟骨移植後にこの様な症状があれば、準緊急的に除去することが望ましいでしょう。尚、この症例では左鼻尖軟骨が正常だったため、右の欠損部に一部補填し、膨らみに費やされていた余剰皮膚分を正軸に用いて鼻スジを真直ぐに高く仕上げました。 |
鼻整形・形成修正でのNG手術とは?
※ページ最下段 美容整形Dr.選びのNG例とは?に加えて
- OPEN法や外側切開法を薦められる or 希望していない手術を薦められる
- シリコンやゴアテックス、リフト糸の挿入・異種動物軟骨移植を勧められる
- 耳介や肋軟骨(粉砕しても凸凹・拘縮・石灰化リスク有)移植を勧められる
- 貴方の鼻の皮膚伸展度に合わない程の挿入物を希望または挿入される
- 硬くなった壊死軟骨や癒着、肉芽等をそのままにした状態で修正される
- 抜去と同時にヒアルロン酸や脂肪注入(漏出変形リスク有)を薦められる 等、どれか一つでも当てはまれば申し込まずに思い留まって下さい!
症例② 37歳 女性
他院手術歴 27歳時:I型プロテーゼ挿入 36歳時:プロテーゼ抜去 37歳時:外側切除式鼻翼挙上・鼻中隔に脂肪注入・鼻尖埋没(結紮)法 その後鼻スジにヒアルロン酸注入 |
希望デザイン 他院で最後に受けた手術後、当初の希望が叶っておらず鼻先端が慢性的にすぐ赤くなり、硬く膨らんで鼻スジが歪んできた。鼻スジをまっすぐにしてダンゴ鼻を細くしたい。 |
方法 鼻整形修正(鼻尖埋没術の修正) 両側鼻尖軟骨切除&Filler除去&シュアダーム挿入術 |
Dr.コメント 鼻尖埋没法(鼻尖結紮法)の最大の問題点は、鼻尖軟骨が割れる(時に粉砕される)ことにより、後々に鼻尖部の硬化や疼痛を生じせしめることです。しかも、殆どのケースでダンゴ鼻を細くさせる効果が無くなるだけでなく、却ってダンゴ鼻が元よりも膨らみ変形してくる可能性が高いことも問題です。この症例はその典型例で、左右(特に右側)の鼻尖軟骨が粉砕されていて、まるで細々に割れたガラス片が無数に突き刺さっている様な形状で右鼻尖部に散在していました。鼻先端の慢性発赤はその前兆所見ですので、本症例①の硬化と共に準緊急的除去のクライテリアとなります。一方で、この症例では鼻尖軟骨除去後に鼻背(鼻スジ)の凹凸が更に強調される可能性が術前シミュレーションで予見できたため、除去後の上方への拘縮(過度なアップノーズ)予防も兼ねて人工真皮のSure Dermを挿入し鼻スジを整えています。 |
鼻尖形成で失敗されるとこうなります!
鼻中隔を切断するOPEN法、または鼻翼外側に傷をつける手術、シリコンやゴアテックス・豚軟骨の移植、自己耳介軟骨や肋軟骨移植術、鼻尖を糸で結紮する手術を勧められた場合、その担当医がどんなに名医で有名でも、或いは過去の症例実績がどれほど素晴らしく自然で美しく見えたとしても、決してその様な手術は受けないで下さい。有名医師や鼻専門の医師の術後でさえ当院で鼻形成後の修正をした方の中には、当院の術前初見において、元よりも著しく醜形となっていた方が数多くいらっしゃいます。
症例③ 18歳 女性
他院手術歴 17歳時:埋没式の鼻尖縮小術(鼻尖結紮法) |
希望デザイン 約1年前に埋没式の鼻尖縮小術を受けたが、約半年で完全に元に戻った。鼻尖部(団子鼻)を細くし鼻スジと同じ細さにしたい。鼻先に面疔の様な治らない点状の赤みがあるのもできればついでに治したい。 |
方法 鼻整形修正(鼻尖埋没術の修正) 両側鼻尖軟骨切除術&埋没結紮糸抜去 |
Dr.コメント この症例も①②症例と同様に、鼻尖結紮法によって両側鼻尖軟骨が割れたことにより、鼻先の形状に顔面の正軸が歪むほどの左右差と硬化による異常な膨らみが生じた方です。しかも、左鼻尖部に治らない面疔(ニキビ様の発赤を伴う小結節)が認められたことから、穿孔寸前であることが自明です。摘出標本を見ると症例②と比較してもそれ程粉砕されていないですが、割れた鼻尖軟骨(爪程の厚み)片の先端が鏃の様にたまたま鋭利に尖ったためだと推論できます。事実、この症例に留まらず、穿孔したか穿孔寸前の他の症例も同様の所見があり、原因を辿れば鼻尖を糸で縛る結紮(埋没)法や耳介軟骨(肋軟骨も含む)移植を受けた方が大半なのです。 |