症例① 61歳 女性
他院手術歴 46歳時(2005年12月) 他院にて全切開タルミ切除+下眼瞼脱脂術を受ける。 55歳時(2014年) 大手美容外科にて頬上部にコンデンスリッチ脂肪注入され、その後次第に注入部位が不自然に膨らみすぎてシコリになる。脂肪溶解注射も1回受けたが無効だった。特に笑顔時に不自然な凸凹が目立つので、目の下にボトックス注射をしたが緩和するも根治せず。 |
希望デザイン 他院では目の下を切開してしこりを除去しなければ治らない様なので、5年以上治せるところを探していた。切らずにしこりを治して欲しい。ついでにお顔全体の若返りもしたい。 |
方法 VASER2.0 4D脂肪吸引 通常モード(全顔面)&無制限脂肪注入&PRM1本& 両下眼瞼 特殊治療セット 吸引量:右75ml 左70ml |
Dr.コメント コンデンスリッチ脂肪でも生着率は通常の脂肪注入とあまり変わらず(※1)、場合によっては、注入された(脂肪幹細胞を含む)脂肪が壊死して異物応答反応を引き起こし、多発性のシコリになり得ます。(線維性の蜂窩状被膜形成による)硬化や多発性の群生腫瘤になると、それら異常線維性組織を悉く穿破する必要があるため、先端が鈍的なカニューレでできている脂肪吸引のハンドピースだけでは上手く治せない場合があります。この症例はまさしくその様な事例でしたので、目の下のシコリ部位に関しては当院オリジナルの特殊治療セットによる治療方針の適応となりました。尚、下眼瞼を表/裏ハムラ方式などで切開・掻把・切除・摘出をしてしまうと、兎眼や下眼瞼の引き攣れ、開閉眼障害等の後遺障害に苛まれることになり得る特異的な部位です。 |
症例② 45歳 女性
他院手術歴 41歳時(2016年頃) 大腿から採取した脂肪を両側下眼瞼周囲や頬に注入される。 |
希望デザイン 両下眼の注入部位にできたしこり、不自然な膨らみをメスを使わずに治したい。 |
方法 両頬:特殊治療セット(計1回)&線維化溶解・再発予防処置(1回)&ステロイド(ケナコルト)注射(4回) |
Dr.コメント 2020年12月に初回治療した方です。4年間以上、目の下の違和感に苛まれていました。特に笑顔になった時に、不自然な膨らみが増強して目が小さくなってきていました。元々インディアンライン(ゴルゴ線、Mid Cheek Groove)を浅くさせるために注入されていた部位なので、壊死脂肪を除去しすぎても(4年以上経過した分)元以上に老けてしまいます。それを防ぎながらの治療でした。尚、繊維性組織の増大もありましたが、初回に壊死脂肪を可及的除去していたため(壊死脂肪や異物さえ無ければ)ステロイド(ケナコルト)注射による微調整は有効です。但し、量の匙加減と注入技術が重要です。 |
症例③ 38歳 女性
他院手術歴 36歳時(2021年7月) 顔面全体に脂肪溶解注射(計3回)を受けたが、鼻尖部に注入されて却ってダンゴ鼻が目立ち鼻筋のボリュームが減った。 37歳時(2021年12月) 鼻根部や(ついでに)目の下を中心に脂肪注入をされ、その後目の下あたりにシコリが群発した。涙袋の境界線も曖昧になってしまった。 |
希望デザイン 先ず、眼の下の群発シコリを治してから、溶解注射で過剰に失われた部位それぞれに幹細胞の再生医療で復元してもらいたい。 |
方法 特殊治療セット(計1回)&(2w後)全顔面フルプレミアム☆フルセット注入 |
Dr.コメント 2022年12月に初回治療した方です。脂肪溶解注射は、溶解薬液の種類、担当医の溶解希釈濃度、注入量とその注入技術、そして本人様の皮下組織の組成や密度などによって、効き方と副作用が様々な段階で出現します。つまり、不確定要素が多くて元の顔貌が実際どうだったのかを窺い知るのは非常に困難で、御本人様の口頭陳述だけが頼りです。前医でされた上記の情報を細かく再現して言える人もいないでしょう。特に、mm単位の変化や外見上判別し難いシコリに違和感を感じ続けている方の場合は、治療後のアフターフォローと毎回治療時の変化に気付く洞察力が不可欠になります。 |
(※1)
コンデンスリッチ脂肪注入術やピュアグラフト方式を含む第二世代までの「幹細胞や再生医療」は、実は普通の脂肪注入と殆ど変わりません。
理由は下記の通りです。
脂肪幹細胞は、分裂・増殖・(脂肪細胞・線維芽細胞・筋細胞・血管内皮細胞・間質細胞等に)分化・成長する能力を持ちながら、そのスイッチがオンにならなければ全く何も変化しない特性があります。
脂肪幹細胞を濃縮するだけなら、却って単位体積当たりの細胞表面積増大により注入された組織内で益々酸素・栄養不足になります。脂肪幹細胞は注入後に酸素や栄養不足で自分自身もEGF等を大量に放出して血管をよこせという命令を出しますが、酸素や栄養不足になると死滅こそすれ勝手には分裂増殖をしません。
もしも脂肪幹細胞を移植するだけで勝手に分裂増殖が続くのであれば、顔面の大きさや注入後の組織量もコントロール不能となるでしょう。
つまり生着率に関しては、脂肪幹細胞を濃縮したり体外培養したりしただけでは全く意味が無いのです。
寧ろ体外培養はもっとリスクが高い、または不明の施術になります。培養室コンタミの問題だけでなく、凍結・培養薬・分化誘導剤等の合成化学薬品漬け・細胞の劣化等のリスクが読めず、培養中の死滅やモノクローナル分化による単一組織形成(肉腫や脂肪腫等の腫瘍になるリスク)など、安全性や効果に関して長期的かつ多角的な評価・エビデンスが全て出揃っているわけではありません。
余談ですが、線維芽細胞を培養して増殖・還元する治療こそが再生医療だと呼ぶ医師もいるようですが、採取時の個体年齢よりもずっと老化した線維芽細胞を戻されるだけなので、数が多くてもコラーゲン生成能力も老人級となり、高額費用と手間に全く見合いません。
重要なのは、
- 術後に生体内での自己組織の死滅を極力防ぐこと
- 生着後脂肪幹細胞の活性化スイッチをオンにしてそれに必要な栄養素を送り続けること
- 壊死細胞は速やかに取り除き、欠損部分を増殖組織で埋め直すこと
- 脂肪幹細胞を0歳のままにするのではなく、皮下の正常な軟部組織を構成する一員に育て上げること
- 注入後の生着率を安全な方法だけでコントロールすること
だと当院は考えます。
これが真の意味での脂肪幹細胞の特性を活かした「自己組織がコントロール下で増殖可能な」再生医療技術なのです。当院では、それを2007年から「フルプレミアム☆フルセット注入&生着維持療法」と呼び、標準術式になっています。