症例① 34歳 女性
他院手術歴 34歳時(2021年1月)、自身が勤める全国チェーン展開の有名美容外科医院にて、その系列医院にて鼻形成では全国No.1と評される医師に依頼して3D鼻尖形成術をOPEN法でしてもらった。 鼻背部には自家肋軟骨移植、鼻尖部には自家耳介軟骨移植をされた。 しかし術後暫くして発赤や熱感が生じ、やがて感染に至り排膿処置等を受ける内に、移殖軟骨片にまで感染が広がったため全て摘出された。すると鼻柱が拘縮で変形し鼻尖が潰れた様になり、凸凹や左右差が顕著になってきたが、手術担当医ではこれ以上治せないとのことで当院に受診するに至った。 |
希望デザイン 潰れてしまった鼻をできるだけ自然な鼻に復元してもらいたい。特に鼻尖部が硬く凹凸、左右差があるので改善したい。鼻中隔の奥に引き込まれている鼻柱とオープン法の傷跡も改善をお願いしたい。 |
方法 1回目:異常線維化解除の前処置の後、(以下のOP全て)完全CLOSE式にて 残存壊死軟骨および肉芽組織除去&Sure Derm挿入術 2回目:拘縮した鼻尖と鼻柱をエクステンションする目的でシリコンプロテーゼ挿入& 鼻中隔結紮による鼻柱形成 3回目:2回目のOPから2ヶ月後に一部Exposingがありトリミングカットするも3ヶ月後プロテーゼ抜去(鼻尖部の組織が一部再生) 4回目:鼻柱のみ(形成目的)にSure Derm挿入 5回目:残存肉芽組織除去&鼻背(隆鼻)および鼻中隔にSure Derm挿入し、更に陥入した鼻柱を起こし上げる目的で結紮固定 6回目:ややUP NOSEにしつつ鼻柱根部を下降させるためと人中を短縮させるため、鼻背の一部と鼻柱根部にSure Derm挿入 |
Dr.コメント 2021年3月から前処置を計3回続けて硬化した鼻尖部の組織を軟化させ、2022年1月に1回目の手術をした症例です。(DESIGNは鼻の1回目の手術時のものです。)前医の術後経過中の感染により、挿入された自家軟骨の壊死を早めただけでは済まず、元々の正常な鼻尖内組織にも欠損と肉芽形成と癒着が複雑に生じて全体的に変形し、かなり硬化した状態でした。そのため、皮膚の充分な伸展を得るために敢えて前処置として異常線維を溶解してから、鼻尖を摘むシミュレーションで伸展が得られそうになってから計画的に手術を行いました。この様に、OPEN法、3D鼻尖形成、耳介or肋軟骨移植で感染や拘縮が生じると修正が非常に困難な状態になります。最終的に鼻中隔延長も御希望であったので、外側に一切傷をつけない当院オリジナル人中短縮に加えて鼻中隔延長効果も加わったために、更に短縮効果がUPしたのだと思います。尚、この症例ではOPEN法の傷跡が浅くなっているものの位置が下方に移動して見えるのは、潰れた鼻尖の復元分でそう見えるだけです。 |
症例② 28歳 女性
他院手術歴 18歳時(2006年)に、大手系列美容整形医院Aにて L型シリコンプロテーゼを挿入された。その後穿孔の可能性が心配になってきたため、22歳時(2010年)他の美容整形医院Bにて L型シリコンプロテーゼ抜去+ゴアテックス挿入+鼻尖部に耳介軟骨移植術を受けた。3D鼻尖形成で鼻尖部を下方に下げたかったが上手くゆかず、鼻スジが太く歪み次第にワシ鼻状に変形してきたため、26歳時(2014年)医院Bにて ゴアテックス抜去+ I 型シリコンプロテーゼ挿入+鼻尖部に耳介軟骨再移植術を受けた。 |
希望デザイン 鼻尖部に浮き出てきた(移植軟骨の)2本の白くて硬い線と鼻柱右側の鼻腔に張り出すコブ状の歪みを治したい。 鼻スジは大まかOKだが歪みを補正したい。鼻尖部をあと少し高くしたいが尖った様な不自然な形にはしたくない。 |
方法 1回目:(2016年)完全CLOSE法にて 隆鼻・鼻尖部形成Sure Derm挿入&鼻尖部の耳介軟骨一部トリミング除去 2回目:(2017年)完全CLOSE法にて シリコンプロテーゼ抜去&鼻尖部の耳介軟骨全除去&再移植&Sure Derm置換術 |
Dr.コメント 2016年1月に初回目、2017年2月に2回目の手術をした方です。最初は挿入されているシリコンを残しながら鼻尖部と鼻柱の問題点だけの修正をご希望されていましたが、1回目の手術の経過中に、やはり「ツッパリ棒の様に」挿入されているシリコンプロテーゼを抜去しない限り鼻スジの歪みが解消されないこと、鼻スジから鼻尖にかけて滑らかに連続した自然な形や質感にならないことに気付かれた様です。2回目の手術では御本人様の御希望で異物と壊死耳介軟骨を全て取り除き、生きている軟骨片だけを再移植しながらほぼ全ての形成を人工真皮だけで完成させました。OPEN法、3D鼻尖形成、耳介or肋軟骨移植では術後数ヶ月~数年で鼻尖の硬化・変形・慢性発赤や菲薄化(白色化)が時限的に進行してくるケースが少なくありません。本症例では鼻尖部に2列の白色化が認められていましたが、それは内部で壊死した移植軟骨片が被膜拘縮によって迫り出してきて鼻尖の皮膚への血流阻害を生じせしめていた典型的な後遺障害でした。慢性発赤と並び準緊急性があります。 |
症例③ 32歳 女性
他院手術歴 28歳時(2019年夏) 美容外科医院 A にてOPEN法で右耳介軟骨を鼻尖部に移植され、同時に鼻尖を糸で結紮する手術を受けた。 31歳時(2022年冬) 鼻の手術で有名な クリニックB にて3D鼻尖形成(左耳介軟骨を鼻柱根部に移植)をされた。→人中短縮、アップノーズ、鼻中隔延長目的でOPEN法で手術を受けたが、傷跡が目立つのと以下①と②の問題が生じた。 |
希望デザイン ①鼻柱根部が人中方向に出っ張りすぎて鼻柱内の瘢痕が目立ち、人中も不自然に短くなりすぎたのを程度よく戻したい。 ②鼻孔の形左右差を治したい。特に鼻孔上部には角(デザイン黒色部)があり鼻孔縁の一部が沈んでいるのを改善したい。 |
方法 完全CLOSE法にて鼻尖軟骨トリミング切除術&鼻柱の過剰分の移植軟骨片除去 |
Dr.コメント 2023年11月に手術をした症例です。AFTERは術後1週間経過した時点での写真ですが、鼻柱付近のお化粧を一部落として頂いています。術前に見られた鼻柱根部の裾野(ハの字に見える土手の様な箇所)にまで過剰に挿入されていた耳介軟骨の突出があり、何らかの外力が加わると穿破してもおかしくない程でした。同時に鼻柱の形状が相対的に不自然なくらい下方にせり出していました。その結果として人中も不自然に短くなっていた様です。特に、鼻柱に挿入されていた耳介軟骨は術野を開けるや否や細かく断片化した壊死軟骨が多数認められ、40個以上に分割された軟骨片と外れていた2本の結紮糸が摘出されました。鼻形成を専門と謳う大抵の医院でも、自家軟骨を用いた「足し算」はよくされていますが、この症例ではそれが過剰であったこと、詰め込まれすぎて術後の経過で多発性の壊死が生じていたこと、鼻柱が裂けそうなくらい硬化や変形を来してきたことが問題でした。実は、不要な組織のみ過不足なく「引き算」することの方が何倍も難しい手術になります。 |