抜去後バスト形状がFlatになるタイプで既にバッグが破損している場合の特殊技術
この記事で後述の「シリコンバッグ抜去&同日再生豊胸 生着率 UP/DOWN のポイント」❶バッグプロテーゼ(シリコンバッグや生理食塩水バッグ等)を抜去後にバストの形状がFlatになるタイプの方は、挿入前のバストサイズが概ねAAAAA~AAcupの範疇であり、特に乳腺下層にバッグが挿入されていた場合には抜去同日再生豊胸術を企図した際、術後シコリ(主に血種や細胞の壊死が原因)形成、或いは脂肪や幹細胞の生着率が著しく損なわれる傾向があります。何故ならDead Spaceには注入細胞が根付くための足場(Scaffold)や血管網が乏しく、もしもそのSpaceに移植細胞が集中してしまえば全ての細胞に酸素や栄養が行渡らなくなるからです。
更に、❸人工インプラントが抜去時既に破損・漏出していた場合や異物の残存が疑われる場合、それに付随して❹高度被膜拘縮が併発している場合の、生着率に与える負の要因はとてつもなく大きく計り知れません。
もしも残存している内容物(多くはシリコンジェル)内に生きた細胞が誤注入でもされれば、確実に細胞が死滅するだけでなくシコリが形成されます。内容物やエンベロープが残存していたなら、被膜内に取り込まれて肉芽化や石灰化まで発展することが予想され、術後の感染リスクも一気に増大します。
既に破損している場合には水飴の様に纏わりつくシリコンジェルを掻把・洗浄・吸引し時には可及的に絡めとって限られた術野から異物を完全に除去することを目指さなければなりません。
一方で高度な被膜が横たわっていれば最小切開創からopenまたはclosed cupslectomyも試み、calcification(石灰化)も除去しなければならず、加えて、抜去後に残る僅かな皮下脂肪層や乳腺周囲、大胸筋膜直上層の厚みの中に(Dead Spaceに決して穿破しない様に。穿破すれば抜去創にまで流出してしまいます)繊細で正確な注入技術が問われるのです。術後もアフターフォローで徹底してシコリの除去や残存被膜の溶解も必須になってきます。
当時は国際学会で初の発表でしたが、以後も独自の技術を磨き続けています
そもそもバッグプロテーゼ抜去同日に同じ乳腺下層(または大胸筋筋膜下層)への自己組織注入による(再生)豊胸術は、2007年に当院が初めて行った手術ですので、開発者責任と同時に開発者でしか知り得ない問題点とそれらを解決する創意工夫の多岐に跨る技術の集積がございます。
如何に小さい創から異物を完全に除去できるか、被膜を効率よく解除または除去できるか、出血や神経ダメージ等のリスクを抑えられるか、抜去後のDead Spaceと注入の個別の工夫、勿論しこり形成や壊死を可及的に回避しながら生着率を高められるか、個別の体型と御希望に合った仕上がりに限りなく近づけられるか、術後のアフターケアでも御本人様のご負担を最小限にするより良い方法はないか、等々です。
そして症例経験値を重ねるにつれてフィードバック機構も働き、独自の進化を遂げることができるものだとの認識が日々新たになってゆきます。故に、本手術に関する一連の技術の種類数も各々のレベルも個別の組合せ方も決して負けない実績と自負がございます。
症例① 39歳 女性 51.3kg
他院手術歴 21歳時:生理食塩水バッグ挿入 乳輪下縁切開にて乳腺下層 サイズ不明 23歳時:生理食塩水バッグ挿入 大胸筋下層(その後いつからか右側破損していたと思う)サイズ不明 |
希望デザイン バッグの不自然さを解消したい。両方とも硬いが、特に右側が縮み上がってきて変形してきた。バストの位置も上過ぎて体格に見合っていないのも不自然に感じる。 |
方法 バッグプロテーゼ抜去+同日再生豊胸(フルプレミアム☆フルセット注入)術 注入量:右・470ml 左:470ml バストサイズ:術前 T:81.0cm U:68.7cm=Acup→抜去時 T:77.2cm U:68.7cm (T-U=8.5㎝=AAcup)→術後 T:83.1cm U:66.6cm=Ccup |
DR.コメント 2014年の症例です。バストのcup数についての(後述する科学的な)定義から計算すると術前は12.5㎝>81.0-68.7cm≧10㎝なのでA cupです。抜去後はAAcupに、組織生着後は83.1-66.6cm≧15.0㎝でC cupとなりました。当院オリジナルの完成した豊胸術「フルプレミアム☆フルセット注入」の過去全例の平均手術効果は、1度の同日手術でバッグプロテーゼ挿入時よりもバストサイズを超えています。しかもこの症例では自己組織の生着条件において「悪い要素が多かったにも拘らず」です。このケースではプロテーゼが生理食塩水バッグだったから残存異物も高度被膜拘縮もなく、悪い因子レベルが低かったことが幸いだったとも考えられます。無論、もっと以前からこの技術があれば人工インプラントが不要だったかも知れないくらいのあり得ない結果で、事実当院が2012年に美容外科学会で発表した時点では世界中でも無かった技術(の集大成)です。勿論この結果を出すためにも術後維持療法や万一の合併症の追加治療等のメンテナンス(当院では必須)が重要です。 |
被膜拘縮(ひまくこうしゅく)とはどんな症状?
被膜拘縮とは、生体内に挿入または注入された異物から自身の細胞や組織を保護する等の目的で、主に線維芽細胞や筋線維芽細胞等により異物を取り囲む線維性の膜状組織(被膜)が形成され、その被膜が異物の長期間の留置または物理的・化学的刺激等により対抗反応して次第に収縮変化することによって生じる締付けられた状態(拘縮)のことを指します。
バストサイズ(cup数)と挿入または注入のボリュームの相関の目安
ここでバストのcup数についての定義とボリュームとの相関について言及します。
当院のコメント欄で表記されているT、Uとは
T:Top bust size (トップバストサイズ)
U:under bust size (アンダーバストサイズ)
T-U:トップとアンダーサイズの差
を指しています。
あとは2.5㎝刻みでC cup → D cup → E cup →・・・と1cupずつUPしてゆきます。
この定義は実感としては馴染が薄いですが、手術結果を評価するには科学的に測定できる指標が必要です。
(装着ブラジャーのサイズが仮にC cupでも、実際にこの定義に則って測定するとA cupであることが大半です。下着メーカーの工夫でバストボリュームを寄せて調整することが可能になったからです)
ここからが本題です。目安として片方のバストあたり100㏄×両側のバスト=計200㏄のボリュームが手術で追加できて減らなかったとすると、バストアップの目安は約1cup UPです。両胸で計400㏄なら2cup UPですがあくまでも目安です。実は個別の体格や体質要素(年齢・授乳歴・身長・骨格や胸郭の形・筋肉量・皮膚の伸展度や厚み・乳房の形状・乳腺や靭帯の厚み等)と、挿入物の形状(例えば同じプロテーゼサイズでもメーカー、アナトミカルタイプとラウンドタイプ、Profile(内容物充填度)やProjection(厚み)、注入なら注入のデザインと技術や方法によって仕上がりのバストサイズと形状は大きく左右されます。勿論、自己組織注入の場合は予後の生着率も重要な要素になってきます。
これらの複雑な要素を御本人様のご要望に合わせて個別に逆算できその通りに実現できるためには、担当医にはAI(人工知能)に負けないくらいの練度と経験値、過去DATAを分析できる資質と反省、そしてその方の掛替えのない一生モノの身体を創造する重大な責任感が必須だと当院では考えております。
症例② 44歳 女性 52.5kg
他院手術歴 32歳時:生理食塩水バッグ挿入するも3ヵ月後に再度シリコンバッグへ入替え手術を受けた 尚、バッグのメーカー・種類・大きさ不明 抜去時に両側とも既に破裂していて内容物(液状シリコン)漏出あり |
希望デザイン 42歳時に大胸筋周囲に肉腫があると医師に言われたため、シリコンバッグが原因だと思い抜去したくなった。但し抜去後にバストが小さくしぼむのはどうしても避けたい。 |
方法 1回目:バッグプロテーゼ抜去+同日脂肪注入術 右・300ml 左・270ml 2回目:豊胸術(プレミアム脂肪・脂肪幹細胞注入)右・230ml 左・200ml バストサイズ:術前 T:86.5cm U:73.0cm→抜去時 T:78.0cm U:73.0cm (T-U=5.0㎝=AAA)→術後 T:87.0cm U:72.0cm |
DR.コメント この症例は2008年に当院で初回手術を行った方です。当時の当院の技術はまだ開発過渡期で再生豊胸術も試行錯誤中であった頃でした。エコー検査でシリコンバッグが破損していることが疑われ、肉腫が形成されていることも他院で指摘をされていましたから準緊急手術になりました。手術に臨み抜去を試みるも、最初に腋窩創から水飴の様な半液状の黄色いジェルが溢れてきました。この手術において最悪な事態の一つです。いくら絞り出しても、ガーゼで拭い取っても、何度も洗浄して何度も吸引しても尚、Dead Spaceに液状シリコンがべっとりと薄膜状に纏わりついています。人間業で分子レベルまでの完全除去は不可能です。善後策としてそのDead Spaceを閉鎖し、Dead Spaceとは別の生きた皮下組織や乳腺下等のLayerに脂肪を注入する方法を採択します。術後にはDead Spaceに残存してた筈の液状シリコンは周囲の細胞によって再構築され、やがてシコリ形成された際に集積されていれば改めて穿刺排出が可能なタイミングが訪れます。このケースでは術後徹底してシコリを治療したため、1回目手術の3ヵ月後に再手術の機会が得られ、その後の経過は良好でした。AFTER写真は2回目手術の2ヶ月後です。 |
シリコンバッグ抜去&同日再生豊胸 生着率 UP/DOWN のポイント
等が、再生豊胸後の生着率に悪い影響を与えるファクターです。
もちろん、術者の手術手技による要素も大きく、例えば他院の「再生医療による豊胸」や「コンデンスリッチ方式」では、吸引脂肪から幹細胞を分離しなければならないとの観点から繊維溶解酵素のコラゲナーゼを混和し、吸引脂肪ごと高回転の遠心分離機にかけて、脂肪幹細胞や自己組織の濃度を高めることに腐心するあまり、却って人工的に吸引脂肪や脂肪幹細胞を破壊し、自然配合比率でない細胞の偏りを生じせしめ、結果的に低生着率のジレンマに陥っています。最も大きな相違は、他院では術後の生着維持療法(当院発祥技術)を全くなされておらず、注入された脂肪幹細胞が術後勝手に増えてくれると誤った認識のままでいることです。
事実、当院では他院の再生医療(幹細胞)豊胸を謳う医院の術後修正手術も多く、他院手術で発症したしこりの治療からしなければならないケースも少なくありません。同時に、左右差改善や谷間形成、神経損傷の回復や残存被膜の治療等、同時に解決しなければならない問題点が多く見受けられます。
一方で最近では凍結保存や分化誘導剤による体外培養をするところも出てきていますが、更に大きな問題点を孕んでいると当院では考えています。凍結保存は高いコストの割に、細胞の鮮度と質、生存率が下がります。そしてそれを補おうとして更に高いコストをかけて分化誘導剤や体外培養液に浸す発想が出てきていますが、(モルモットや試験管内の実験でエビデンスが仮にあったとしても)、モノクローナルに増殖した細胞が乳房内で正常で自然な組織を形成するのか、つまり脂肪細胞・血管内皮細胞・線維芽細胞・細胞間質・毛細血管・Scaffold等のミクロレベルの役割を担う各細胞が自然分布の組織を構成するのか、使用する分化誘導剤が混入されたまま豊胸で乳房内に注入されると、浸透して乳腺に作用し発癌性をもたらさないか、癌化せずともシコリが発症したり細胞の疲弊や老化が進行しすぎないかという問題があり、未知のリスクを伴う壮大な人体実験になるのではないのかと考えざるを得ないのです。少なくとも、私の身内に対しては絶対に勧めません。
症例③ 39歳 女性
他院手術歴 30歳時:大胸筋下層へMBバッグを挿入したと言われた (術中所見 右側:300cc 破損・漏出あり 左側:280cc 破損・漏出なし) |
希望デザイン バッグの可動範囲が小さくなり形が不自然になってきたので脂肪注入をしたい。 |
方法 1回目:バッグプロテーゼ抜去+同日脂肪注入術 注入量:右・396ml 左・396ml 2回目:バッグプロテーゼ抜去+同日再生豊胸(プレミアム2本☆フルセット注入)術 注入量:右・359ml 左・360ml バストサイズ:術前 T:84.0cm U73.0cm→抜去後 T:78.5㎝ U:73.0cm (T-U=5.5㎝=AAA)→3M T:84.5cm U:74.0cm |
DR.コメント この症例も2009年2月に初回の手術をした方で、当時の当院の技術はまだ開発過渡期で再生豊胸術も試行錯誤中であった頃でした。このケースでは破損漏出の程度が低かったのが幸いでしたが被膜拘縮はご覧の通り大胸筋筋膜下層で高度に発症していました。実は大胸筋下層と大胸筋筋膜下層とは似て非なる層で、ほぼ乳腺下層なのです。しかも筋膜が一部破壊されながら被膜と複雑に癒着しているため、抜去後にバストが陥没しているのです(もしも大胸筋下層だったら、肋骨骨膜と大胸筋の裏がFITするだけなのでこの様に引き攣れた陥没にはなりません)。原則に則り、広範なDead Spaceに決して誤注入や穿破をしない様に留意しながら、僅かに残る皮下脂肪層や乳腺周囲の厚みの中に繊細で正確な注入をしなければなりません。当院が2007年に世界で初めて行った当時は前人未踏の技術でしたが、この頃にはもう特殊な注入技術が問題を解決する方法として(私の中では)確立されてきておりました。しかし御本人様の御希望に到達するには2回の手術を要しました。 |
バッグプロテーゼ挿入時のバストサイズ越えは可能です!
当院では人工物抜去&VASER脂肪吸引&同日再生豊胸術を施術した症例が多数ございます。2012年5月の第100回日本美容外科学会で当院が発表した「濃縮還元脂肪幹細胞を生体内で増殖させる技術の豊胸術と若返り術への適応」において過去5年間の全症例の術後平均バストサイズが、バッグプロテーゼ挿入時のバストサイズを越えておりましたが、その後の約10年で更に進化しています。(尤も、2009年11月に先行して日中韓合同国際美容外科学会において、世界で最初に「シリコンバッグ抜去&生体内再生医療による豊胸術(Replacing the Implant with Cultured Adipose-Derived Stem Cells(AdSCs)in Vivo)」「人由来脂肪幹細胞を生体内で増殖成長させるという企図を含む新しい技術によりシリコンバッグやその合併症によって不自然になった乳房を本物に創りかえる手術」を発表しております。)2012年5月当時、他院で1院のみ人工物抜去とコンデンスリッチ豊胸の症例を発表しているところがありましたが、どの症例においてもバッグプロテーゼ挿入時のバストサイズを越えができていないと報告されていました。
シリコン・生食バッグ・Filler注入がダメな理由と背景
どんなに精巧で最新のシリコンプロテーゼでも生理食塩水バッグでも、異物は人体に挿入後数か月から数年を経て遅延型異物応答反応と呼ばれる線維化・肉芽化・石灰化が生じてきます。するとやがてバストの変形・硬化・内部破損・慢性の発赤・引き攣れや感覚障害・表皮穿破や露出等の後遺障害となって、更に時間が経つ程に難治性へと移行してゆくこともしばしば見受けられます。
ヒアルロン酸やアクアフィリング等のFiller注入は手技が比較的容易であり、低時間コストで経験の浅い医師でもできますが、その修正はかなり困難です。
豊胸手術分野でのNG手術とは?
※ページ最下段 美容整形Dr.選びのNG例とは?に加えて
- 一生涯傷跡が目立つ乳房下縁切開や乳輪周囲切開を薦められる
- シリコンプロテーゼや生理食塩水バッグ等の異物を第一に勧められる
- シリコンなどの異物挿入と脂肪などの自己組織注入を同時に行う
- ヒアルロン酸やアクアフィリング等のフィラー注入を勧められる
- 異物抜去層と同じ層に脂肪や幹細胞などの自己組織を注入される 等、どれか一つでも当てはまれば申し込まずに思い留まって下さい!