症例① 28歳 女性
他院手術歴 28歳時(2023年1月) 経結膜脱脂術+両頬にコンデンスリッチ脂肪をたくさん注入されたが、その後大きなシコリになった。 |
希望デザイン 可能な限り注入された脂肪を除去して元の顔に戻したい。笑顔の時が特に不自然で左右差も目立つので、メスも使わずにこれ以上老けたり悪化したりしない様な方法で治したい。 |
方法 両頬:特殊治療セット(計1回)&線維化溶解・再発予防処置(1回) |
Dr.コメント コンデンスリッチ脂肪でも生着率は通常の脂肪注入とあまり変わらず(※1)、場合によっては、注入された(脂肪幹細胞を含む)脂肪が壊死して異物応答反応を引き起こし、多発性のシコリになり得ます。(線維性の蜂窩状被膜形成による)硬化や多発性の群生腫瘤になると、それら異常線維性組織を悉く穿破する必要があるため、先端が鈍的なカニューレでできている脂肪吸引のハンドピースだけでは上手く治せない場合があります。この症例はまさしくその様な事例でしたので、当院オリジナルの特殊治療セットによる治療方針の適応となりました。 |
症例② 31歳 男性
他院手術歴 28歳時(2020年) FGF入りPRP(目の下、法令線)注入 29歳時(2021年) 下眼瞼脱脂+大腿より吸引した脂肪注入(目の下~頬)を受けたが、その後次第に頬全体が硬化して不自然に膨らみ、異常感覚も感じる様になった。 それを治療する目的で脂肪溶解注射を10回以上試みたが全く効果が無かった。 |
希望デザイン 両頬の異常なふくらみと違和感を切開せずに改善したい。たとえ治療目的でもシワやタルミ、凸凹にならない様にしたい。 |
方法 両頬:特殊治療セット(計1回)&線維化溶解・再発予防処置(1回) |
Dr.コメント 脂肪注入単独の合併症なら、壊死脂肪の除去と線維性組織の穿破や溶解で治療回数も少なく済む見込みが立ちますが、そこにFGF入りのPRPが脂肪注入前後で関わっているのなら、治療がずっと厄介になります。因みに、他院にてシコリ治療目的に「脂肪溶解注射を10回以上も試みた」とありますが、脂肪溶解注射は生きている脂肪細胞にしか効かないので、壊死脂肪やFGFによる異常線維性組織に対しては全く的外れな治療になります。ステロイド(ケナコルト)注射も、同様に無効です。この症例ではまだFGFが注入された部位が限定的だったためか、結果的に最小回数の治療で済んでいます。 |
症例③ 55歳 女性
他院手術歴 17歳時(1980年) 交通外傷により顔面に多発性の裂傷を受傷 40歳時(2003年) フェザーリフト手術を受ける 43歳時(2006年) フェイスリフト手術と頬の広範囲に跨る脂肪注入 |
希望デザイン 以前、交通外傷後の欠損部形成や顔面非対称を治し、アンチエイジング目的で注入した脂肪が多すぎるのと、一部硬くなっているのでタルミを予防する目的もあり、娘にKunoクリニックを勧められて決意しました。 |
方法 VASER Ventex 通常モード吸引(全顔面)&脂肪+PRP無制限注入 吸引量:右85ml 左65ml |
Dr.コメント この症例は過去に脂肪注入された顔面の各部位を触診してもなお、硬化している部位がかなり限定的であったため、年齢を考慮してタルミ予防目的も兼ねて一期的に、VASER脂肪吸引と壊死脂肪の除外操作で吸引脂肪の再注入を試みました。但し、外見上の輪郭の左右差だけでなく、皮下組織には無数の組織組成(厚みや硬さなど)の差もあるため、デザインはフルオーダーで上記の様なものになりました。4D技術で忠実に吸引し各欠損部に注入すると術後は55歳に見えない程タルミが程よく収縮して自然に若返りました。タルミを切除するフェイスリフトではこの様な自然な効果は期待できません。尚、古い多発性裂傷痕とフェイスリフト術後瘢痕のケロイド様肥厚化があるためか、吸引後の頬下部に繊維性組織の増大がありましたが、(壊死脂肪や異物さえ無ければ)ステロイド(ケナコルト)注射は有効です。術後もアフターケアしております。 |
(※1)
コンデンスリッチ脂肪注入術やピュアグラフト方式を含む第二世代までの「幹細胞や再生医療」は、実は普通の脂肪注入と殆ど変わりません。
理由は下記の通りです。
脂肪幹細胞は、分裂・増殖・(脂肪細胞・線維芽細胞・筋細胞・血管内皮細胞・間質細胞等に)分化・成長する能力を持ちながら、そのスイッチがオンにならなければ全く何も変化しない特性があります。
脂肪幹細胞を濃縮するだけなら、却って単位体積当たりの細胞表面積増大により注入された組織内で益々酸素・栄養不足になります。脂肪幹細胞は注入後に酸素や栄養不足で自分自身もEGF等を大量に放出して血管をよこせという命令を出しますが、酸素や栄養不足になると死滅こそすれ勝手には分裂増殖をしません。
もしも脂肪幹細胞を移植するだけで勝手に分裂増殖が続くのであれば、顔面の大きさや注入後の組織量もコントロール不能となるでしょう。
つまり生着率に関しては、脂肪幹細胞を濃縮したり体外培養したりしただけでは全く意味が無いのです。
寧ろ体外培養はもっとリスクが高い、または不明の施術になります。培養室コンタミの問題だけでなく、凍結・培養薬・分化誘導剤等の合成化学薬品漬け・細胞の劣化等のリスクが読めず、培養中の死滅やモノクローナル分化による単一組織形成(肉腫や脂肪腫等の腫瘍になるリスク)など、安全性や効果に関して長期的かつ多角的な評価・エビデンスが全て出揃っているわけではありません。
余談ですが、線維芽細胞を培養して増殖・還元する治療こそが再生医療だと呼ぶ医師もいるようですが、採取時の個体年齢よりもずっと老化した線維芽細胞を戻されるだけなので、数が多くてもコラーゲン生成能力も老人級となり、高額費用と手間に全く見合いません。
重要なのは、
- 術後に生体内での自己組織の死滅を極力防ぐこと
- 生着後脂肪幹細胞の活性化スイッチをオンにしてそれに必要な栄養素を送り続けること
- 壊死細胞は速やかに取り除き、欠損部分を増殖組織で埋め直すこと
- 脂肪幹細胞を0歳のままにするのではなく、皮下の正常な軟部組織を構成する一員に育て上げること
- 注入後の生着率を安全な方法だけでコントロールすること
だと当院は考えます。
これが真の意味での脂肪幹細胞の特性を活かした「自己組織がコントロール下で増殖可能な」再生医療技術なのです。当院では、それを2007年から「フルプレミアム☆フルセット注入&生着維持療法」と呼び、標準術式になっています。