蒙古ヒダツッパリタイプの加齢要素が加わった眼瞼下垂の治療
蒙古ヒダのツッパリと加齢要素が加わった眼瞼下垂の方は、❷仮性眼瞼下垂で後天性の5大要因の内、主に蒙古ヒダの牽引(ツッパリ)が起因していますが、挙筋腱膜の弛緩、上眼瞼陥凹症、上眼瞼や前額のタルミ、皮膚の肥厚化、裂傷や刺傷・そして眼瞼下垂手術(医源的眼瞼下垂)など幾つかの要因が複合的に組合さっています。術前シミュレーションを施すと、特に平行型の二重ラインをご希望される場合には、内眼角(目頭の尖った部分)の下側の皮膚が連動して動き、ツッパリ返しが生じて結局そこには(埋没の糸だけでは)決して二重ラインや陥入が入らない構造になっているタイプです。従来はそこを三日月形に切除する方式の目頭切開しか無かったのですが、折登先生がZ形成術を発表されたのを機に次第に普及してきました。しかし、その術式はたった1通りの概念しか発表されていなかったため、個別のオーダーメイドに応用させつつ更に傷跡を目立たなくさせながら眼瞼下垂に適応させるまで昇華しなければなりませんでした。
眼瞼下垂、全切開せずに治したい!
蒙古襞(もうこひだ)とは?
蒙古襞(蒙古ヒダ・モウコヒダ・瞼鼻ヒダ・ケンビヒダ)とは、主に東洋人に多く見られる特徴で、上眼瞼内側から目頭の内眼角にかけて下眼瞼にまで跨り連続している、または被さっている贅皮(ぜいひ=余剰皮膚)のことです。それが分厚いか伸展余力が少ないと、つっぱる自覚が無くとも(贅皮が少ない人と比較して)つっぱっている力(開眼の妨げになる力)が常に上下瞼全体に連動して働くために、開眼時に目を大きく開くことの反張力となり得るか、目の大きさが小さくみえる、または目つきの印象に影響することがあります。一般的に二重幅も目頭付近で一重になるか幅が狭くなる傾向があります。
症例① 30歳 女性
他院手術歴:なし |
希望デザイン 体重が減少したきっかけで、眼が開きにくくなってきた。以前より左側が開きにくいが、この際に両方とも眼瞼下垂を治したい。 |
方法 両側 完全オーダーメイドZ形成目頭切開 LEVELⅢ&両側 新挙筋法2針4点固定法 |
Dr.コメント この症例は、生来の眼瞼下垂兆候(特に左側)があったものの、痩せたことがきっかけで眼瞼下垂が進行した方です。蒙古ヒダのツッパリが明らかで、上眼瞼にクボミと僅かなタルミが認められていますが、傷跡を目立たなくさせる目的と同時に(特に左側内側の睫毛の挙上度を確保する目的で)オーダーメイドZ形成デザインを(蒙古ヒダの裏側に㎜以下単位で)施しました。左内眼角の上下方向に蒙古ヒダが放物線状に存在しているため、従来(他院)ならその放物線に沿った三日月形の皮弁切除をされてしまう様な典型例ですが、それだと瘢痕拘縮のため却って眼瞼下垂が悪化します。当院では傷跡を目立たなくさせる至上命題と牽引を上手く解除することを同時に満たす、彼女の左瞼だけの(右側も左に揃える様に別のデザインを施していますが)曲線Zデザインを施し、その通りに切除して新挙筋法の開眼効果と連動させています。 |
症例② 60歳 女性
他院手術歴 18歳時:両側 埋没法(瞼板法) 30歳時:両側 埋没法(瞼板法) |
希望デザイン 目頭の皮膚のツッパリ(被さり)のせいで特に左側の目が開きにくいのを改善したい。両側の目尻が下がってきているのもついでに少し吊り上げたい。 |
方法 1回目:両側 新挙筋法2針4点固定法 2回目:右側 新挙筋法1針2点固定法&左側 最小限オーダーメイド目頭部分切開 LEVELⅣ |
Dr.コメント この症例は、経年変化で進行した眼瞼下垂の典型例です。元々蒙古ヒダが被さっていて開眼のブレーキになっていることに加えて、タルミやクボミも進行し、挙筋力も衰えてくるとやがて常に眉が挙がったままの顔貌になってしまいます。昔、双子で100歳の金さん銀さんがTVのCMに出演されていましたが、目があまり開いていないのにも拘らず彼女たちの眉は常に挙がりっ放しでした。一方でコメカミも痩せてきて凹んでくると目尻側の瞼のタルミも一層進行してきます。従来はコメカミにプロテーゼ挿入を挿入されるかコメカミリフト手術といってメスで側頭部の皮膚を切除される手術が盛んでしたが、脱毛や顔面神経麻痺などのリスクが高いので、現在は隠避される傾向です。当院では注入だけで済む脂肪幹細胞を用いた再生医療を(必要または御希望時には)併用しています。詳細は下記関連記事をご参照下さい。 |
症例③ 38歳 女性
他院手術歴 26歳時:両側 埋没法(瞼板法) |
希望デザイン 目頭側の目のカタチに丸みを持たせたいが、目と目の間の距離は元々近い方なのでこれ以上縮めたくない。目の開きもあと少し大きくできればありがたい。 |
方法 1回目:両側 新挙筋法2針4点固定法 2回目:両側 完全オーダーメイドZ形成目頭切開 LEVELⅢ |
Dr.コメント この方はそれほど眼瞼下垂の進行はありませんでしたが、軽度のクボミとタルミが認められました。一度新挙筋法だけで試みたのですが、蒙古ヒダのツッパリ返しのため余計に(Fox eyeの様な)直線的な目の形になりそうだったため、Z形成目頭切開の適応となりました。当院の目頭切開は、傷跡を表側に出さないまま目頭側の目の形を変えることができます。この方の内眼角間距離は術前37.5㎜もあったのですが、それ程縮めたくないとのことで、術後は36.5㎜に留まっています。結果、御本人様が御希望された通りの奥二重の平行型でアーモンド形の優しい印象の目の形になりました。 |