傾斜鼻とは?
傾斜鼻とは、眉間中央から鼻尖中央を結ぶ鼻背の軸(Axis)が直線的でありながら、正面または下方向から見た何れかの顔面の中心軸(Axis)と一致せず、ズレの角度が一定以上認められる鼻の形状を指します。湾曲を併発していることもあります。
(組織欠損や奇形等の)先天的な原因と(発育過程、外傷や手術等の)後天的な原因のものに大別されます。いずれの場合も鼻を構成する組織の左右差だけでなく、顔面の表情筋群や土台である鼻翼基部が遠因であることもあります。
症例① 26歳 女性
他院手術歴 21歳時(2008年5月) 鼻形成を専門とする医師がいる美容外科医院にて、右耳介軟骨を鼻尖に移植する手術と、L 型シリコンプロテーゼ挿入術を受けた。その後鼻尖部の皮膚が薄く赤くなって、違和感から痛みに進行した。 24歳時(2011年1月) 別の全国展開美容整形医院にてプロテーゼ入替(L 型→ I 型)手術を受けた。 |
希望デザイン 鼻先端の皮膚が薄く白くなり、痛みが出てきた。 プロテーゼを抜いて、シリコンを使わないで鼻スジの歪みも鼻先の不自然な膨らみと硬さも治したい。 |
方法 完全CLOSE法にてプロテーゼ抜去 & 他院挿入耳介軟骨除去 & 生着組織片の再移植 |
Dr.コメント 2013年3月に完全CLOSE法で手術をした典型的な「傾斜鼻」の症例で、正面からはウインナーの様に曲がって見えますが下からは左側への傾斜が著明です。 I 型とは言えほぼL型のシリコンプロテーゼが(ツッパリ棒の様に)挿入され被膜拘縮で変形が進行ていたことが原因の一つですが、鼻孔にはある程度の左右差が元々ありました。 シリコンと自己組織のハイブリッド手術では接触断端での自己組織への血流遮断による壊死を想定しなければなりません(実際に大半が壊死)が、この症例の場合は生着組織片が一部あったことが幸いし、鼻の高さを保つためトリミングして再移植しました。Sure Dermを用いずに済んでいます。 |
湾曲鼻とは?
湾曲鼻とは、眉間中央から鼻尖中央を結ぶ鼻背の(理想)線分軸(Axis)が、正面または下方向から見た何れかの顔面の中心軸(Axis)から逸脱し、屈曲や蛇行、偏移などが認められる鼻の形状を指します。傾斜を併発していることもあります。
これも(組織欠損や奇形等の)先天的な原因と(発育過程、外傷や手術等の)後天的な原因のものに大別されます。
例えば横から見てワシ鼻やウエーブ鼻、正面から見てバナナ鼻やウインナー鼻などが湾曲鼻の部類に属します。
症例② 42歳 女性
他院手術歴 29歳時(2012年頃)鼻形成専門医がいる全国系列美容外科医院にてハンプ(ワシ鼻の骨削り)手術と、L 型シリコンプロテーゼ挿入術を受けた。 |
希望デザイン 右鼻尖部に突出しかかったL型プロテーゼを抜去し、歪んだ鼻筋を真っ直ぐに戻したい。家族にバレたくないので、シリコンを抜去した後の鼻が今後変形したり低くならない様、シュアダームで元の鼻に近づけて復元してもらいたい。 |
方法 シリコンプロテーゼ抜去( L 型)& Sure Derm置換術 & 鼻尖軟骨一部トリミング切除 & Sure Derm置換術 & 鼻尖に鼻尖軟骨再挿入術 TypeⅡ |
Dr.コメント 2013年8月に完全CLOSE法にて手術をした症例です。正面からバナナの様に曲がって見える典型的な湾曲鼻ですが、下から見ても鼻尖の軸がズレています。 同居する御主人様に覚られないよう、ギプス固定を要する術後3日間はホテルに滞在され、結果的に無事鼻のアリバイが保てたと仰っていました。 L型プロテーゼを抜去すると、ツッパリ棒を解除したルーズソックスの様に縮み上がることが少なくなく、強度がある代替の「柱」が必要になることがあります。この症例では自身の鼻尖軟骨を「柱」として用い、軟骨を除去したスペースにSure Dermを置換して形状を保ちました。同時にシリコンを抜去した鼻背部もSure Dermで補っています。 この方のご希望が「湾曲鼻を改善しつつ今後穿孔が起こらない対策を立てながら、何事も無かったかの様に元の鼻を復元すること」に尽きるので、忠実に再現するため結果的に本術式の組合せになりました。 |
当院オリジナルMENU
鼻尖軟骨切除&再移植術 移植先TYPE別 分類
変形鼻とは?
変形鼻とは、傾斜鼻や湾曲鼻を含むより大きな集合カテゴリーの呼称です。
3D方向正軸(Axis)からのズレや偏移に留まらず、凸凹や著明な左右差、鞍鼻や不自然な過剰アップノーズなど、その概念の適応範囲は広く、(組織欠損や奇形等の)先天的な原因と(発育過程、外傷や手術等の)後天的な原因のものに大別されます。
症例③ 40歳 中国人 女性
他院手術歴 20歳時(1996年頃) 中国の医院にて隆鼻目的だが名称不明の充填剤(Filler)を注入された。 22歳時(1998年頃) 中国の医院にてL 型シリコンプロテーゼ挿入術を受けたが、希望通りの鼻にならずその後計5~6回修正手術を繰り返した。しかし修正手術をすればするほど鼻の形が変形し、おかしくなる一方だった。 33歳時(2009年12月) 結局L 型シリコンプロテーゼを抜去してI型シリコンプロテーゼへの置換術のみを受けた。 |
希望デザイン 鼻尖部を細くしながら凸凹や陥没を改善し、上向きの鼻尖部を下げたい。鼻背部を高くし反った形をできるだけ改善したい。 鼻中隔も下方に下げて人中を短くしたい。 |
方法 完全クローズ法にて シリコンプロテーゼ抜去(I型)& 鼻背Sure Derm置換術 & 破損鼻尖軟骨除去 & 鼻尖と鼻柱にSure Derm挿入術 |
Dr.コメント 2017年1月に完全CLOSE法にて手術をした症例です。 多数の中国の形成外科、日本の美容整形医院や専門医に「(クローズ法の)手術で改善させるのは難しい」と匙を投げられていましたが、当院でもかなり「難治性」であることが予想されました。 この方の初回の充填剤が不明である上、22歳~33歳の間に受けた5~6回の修正手術の詳細も「詳しく説明されていないし覚えていない」という状況で、触診すると至る所に硬化した腫瘤を触知しました。実際、術中に軟骨断片(恐らく壊死した移植耳介軟骨片や複数の手術で粉砕され変形した鼻尖軟骨片)が夥しく摘出されています。 完全クローズ法で異常組織のみを可及的に除去するには豊富な経験と高度な技術を要します。加えて、鼻中隔を延長して人中を短くすることとダウンノーズにすることは、普通なら二律背反しています。 複数ある問題点と同時に叶えたい本人様の御希望の数々を必要かつ十分に実現するには、上記の術式の組合せがMaxベターと考えます。 |